冷え性対策~アンチエイジング筋肉運動~

筋肉量の割合

私たちの体の筋肉は、基本的には20歳をピークに、年々減少していきます。20代の中肉中背の男子で体の中に占める筋肉量の割合は40%、女性では35%ほどです。それが70代になると、ピーク時の3分の2程度、つまり約23%~26%にまで減少します。

~筋肉は使わないとどんどん減っていきます。~

「老」という漢字は、もともと腰が曲がり、顎を突き出した老人の姿をかたどったものだといいます。
年をとったときに腰が曲がったり猫背になったりするのは、骨が変形するからではありません。姿勢を保つのに必要な筋肉が失われるからなのです。その証拠に、腰が曲がった老人も、ふとんに横たわると、体は真っ直ぐになります。もし骨が変形しているのなら、横になっても腰が曲がってしまうはずです。
筋肉の減少量を平均すると、だいたい年1%ずつ筋肉は減少していくことがわかります。こうした筋肉の減少率は、男性も女性もほぼ同じです。
ただし、これはごく普通の日常生活を送っていた人の場合です。
よく、年をとって転んで骨を折ったのを境に歩けなくなってしまったという話を聞きますが、これは筋肉が急激に失われてしまった結果です。
筋肉というのは、動かさないと驚くほど速いスピードで失われてしまいます。 例えば、寝たきり老人のように一日中、それこそトイレもベッドの上で済ませるような生活をしたとしましょう。いったい筋肉はどのくらい失われると思いますか?
なんと、1日で約0.5%もの筋肉が失われてしまうのです。
通常の生活をした場合の加齢による筋肉の減少率が年間1%ですから、寝たきり生活をすると、たった2日間で1年分の筋肉を失ってしまうということです。
皆さんも風邪などで1週間近く寝込んだあと、体がふらふらするのを体験したことがあると思います。あれは、風邪によって体力が消耗したということもあるのですが、筋肉が短期間で急激に失われてしまったため、体を支える力が低下してしまった結果でもあるのです。
筋肉を維持するためには、毎日の生活の中で、筋肉に適度な負荷をかけつづけることが必要です。
実は、こうした筋肉の研究が進んだのは、人間が宇宙に行くようになったことが1つのきっかけでした。たった数日でも、宇宙に飛び立った飛行士は、地球に帰還したとき、筋肉が衰えてしまい、歩くことができなくなってしまっていたからです。
宇宙空間は無重力なので、宇宙飛行士の体にはほとんど負荷がかかりません。そのため体を動かしていても、相当量の筋肉が失われてしまうのです。
ですから、今では筋肉の萎縮を防ぐために、出発前に筋肉を増やすトレーニングを行うとともに、宇宙空間でもランニングマシンや自転車こぎのような、マシンを使って筋肉に負荷をかけるようなトレーニングを行うことがプログラムで決められています。
また、最近は、手術などで入院した患者さんにも、できるだけ早くから病院内を歩くよう指導がなされています。これも、入院中はどうしてもベッドの上で過ごすことが多くなるため、筋肉が衰えるのを防ぐ目的で行われているのです。
病院内を少し歩くぐらいで筋肉の減少を防ぐことができるのか、と思うかもしれませんが、人間の筋肉の7割はおへそから下にあるので、「歩く」ということは、私たちが思っている以上に効率よく筋肉を鍛えることにつながっているのです。

~有酸素運動は脂肪を減らし、無酸素運動は筋肉を鍛える!~

運動には、大きく分けて「有酸素運動」と「無酸素運動」の2つがあります。
有酸素運動というのは、ジョギングやウォーキング、エアロビクスなど、比較的低い負荷で長時間続けられる運動です。また、無酸素運動というのは、ウエイトリフティングや短距離走など、息を止めて短時間に強い力を発揮する運動です。
最近は、メタボ検診が行われるようになったこともあり、ダイエットを目的にスポーツクラブに通う中高年の男性が増えていますが、そうしたときにインストラクターから勧められるのは有酸素運動です。
なぜダイエットでは有酸素運動が勧められるのでしょうか。
それは、有酸素運動では、運動のエネルギー源として「糖」と「脂肪」の両方が消費されるからです。
これに対し、無酸素運動のエネルギー源は糖だけで脂肪は使われません。ですから、無酸素運動をいくら頑張ってトレーニングしても、体脂肪の減少にはつながらないのです。
こうした運動特性の違いは、アスリートの体型に如実に表れています。
例えば、同じように「走る」運動でも、マラソン選手と100メートル走の選手では、体つきがまったく違います。マラソン選手は皆、針のように細い体型をしていますが、100メートル走の選手は筋肉の発達した厚みのある体型をしています。
彼らの体型が違ったものになる理由は2つあります。1つは運動に使われるエネルギー源の違い、もう1つは鍛えられる筋肉の違いです。
マラソンは有酸素運動なので、脂肪が燃焼されます。その結果、体脂肪の極端に少ない体型になってしまいます。女性のマラソン選手は皆、バストやおしりの脂肪までなくなってしまいますが、それはハードなトレーニングで女性特有の脂肪までもが使われてしまうからなのです。
一方、100メートル走のように、呼吸をせず短時間にフルパワーを発揮する無酸素運動では、脂肪は消費されないので、女性選手のバストやおしりの脂肪は失われません。
そんな100メートル選手の体型で目立つのは、何といっても発達した筋肉です。
それに対してマラソン選手は、皆スレンダーで筋肉質というイメージはあまり強くありません。でも、実際にはとても発達した筋肉を持っています。
筋肉には2つの種類があります。1つは強い瞬発力を発揮することができる「速筋(白筋/ファーストユニット)」と、力は強くないが長い時間にわたって力を持続することのできる「遅筋(赤筋/スローユニット)」の2つです。
速筋は筋繊維が太いので、鍛えると太く大きく発達していきます。無酸素運動で鍛えられるのはこの筋肉なので、100メートル走のランナーは皆、ムキムキの見るからに筋肉質な体型になっていくのです。
一方、マラソンのような有酸素運動で鍛えられるのは、筋繊維の非常に細い遅筋です。遅筋は鍛えても筋繊維があまり太くならないので、一見すると筋肉質とは思えないスレンダーな体型になります。
女性は筋肉を鍛えると、グラマラスな女性らしい体型が失われ、ムキムキの体になってしまうのではないかと心配する人が多いのですが、必ずしもそうなるわけではありません。どんな体型になるかは、どんな筋肉を鍛えるかで違ってくるのです。

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