トレーニング方法
筋肉トレーニングが体にいいというと、まじめな日本人は、毎日欠かさずトレーニングを行ってしまう人が多いのですが、トレーニングのしすぎは禁物なんですよ。なぜなら・・・。
~運動のしすぎも体にとってはストレスなんです!!~
筋肉を鍛えるということは、別の言い方をすれば筋肉細胞をわざと傷つけるということでもあるのです。
筋肉を構成している細胞は、細胞の中でもとても大きく、最大のものは10センチもの大きさがあります。そのため他の細胞のように、簡単につくり替えることができません。でも、そんな性質をもった細胞だからこそ、ほかにはない能力ももっています。それは、細胞の修復機能です。
実は、筋肉を鍛えるというのは、この修復機能を利用したものなのです。
ある程度の負荷が加わると、筋肉は損傷します。すると、傷ついた筋肉細胞に修復機能が働くのですが、このとき再び傷つかないように、前よりも太い筋肉になるように修復されるという性質があるのです。これこそが、トレーニングによって筋肉が太く発達していく仕組みです。
つまり、筋肉が鍛えられるためには、トレーニングによる損傷と、それを修復するという2つの行程を経ることが必要だということです。毎日のトレーニングが逆効果になるというのは、修復期間にも損傷が行われてしまうからです。
理想的な筋肉トレーニングは3日に1回程度です。これだと、傷ついた筋肉細胞が休みの2日間に修復されるので、筋肉細胞にかかるストレスが最小限度で済みます。
筋肉の絶対量が少ない人は、ある程度筋肉を増やすために、負荷や回数を伴うトレーニングをすることが必要ですが、3か月から半年ほどトレーニングをして筋肉量が増えたら、脳から筋肉への神経経路を鍛えるトレーニングだけでも、充分な筋肉量を維持できるようになります。
~「スロトレ」とは何か?~
スポーツジムやテレビなどで、効果的な筋肉トレーニング法として「加圧トレーニング」が話題を呼んでいます。
加圧トレーニングとは、簡単にいうと、ベルトなどで筋肉に流れる血液を制限した状態でトレーニングすることによって、無酸素運動の効果を引き上げるトレーニング法です。
無酸素状態で運動すると、筋肉には「乳酸」という疲労物質がたまります。
実は、この乳酸がとてつもない威力を発揮するのです。
どういうことかというと、筋肉に乳酸がたまると、それに対してフィードバックメカニズムが働き、脳にその情報が行くことによって、下垂体から成長ホルモンが分泌されるのです。
ごく普通の筋トレを行っても成長ホルモンは出るのですが、乳酸がたまったという情報が脳に行くと、成長ホルモンの分泌量が何百倍という驚くべきレベルで急増するのです。
実はこの成長ホルモンの急増こそが、加圧トレーニングの効果の正体なのです。
成長ホルモンは筋肉の増加を促進させるホルモンなので、成長ホルモンの量が多ければ多いほど筋肉は大きくなりやすくなります。
つまり加圧トレーニングは、血行をわざと止めることで、無酸素状態をつくりだすとともにエネルギーの供給をストップさせ、乳酸をより効率よく出させることで成長ホルモンを最大限に引き出し、筋肉を増やしていくのです。
効果のとても大きい加圧トレーニングですが、個人で行う場合にはデメリットもあります。
それは、血流を制限して行うので、専門のトレーナーについて行わないと危険が伴うということです。血流を止めすぎると、血流障害を起こしたり、ひどいときには血栓ができたりして、命に関わる危険すらあります。
そこでお勧めしたいのは、加圧トレーニングに近い効果をもちながら、家庭で1人でも安全に行える「スロートレーニング」です。
スロートレーニング、通称「スロトレ」とは、文字どおり非常にゆっくりとしたスピードで行う筋肉トレーニング法です。
具体的にいうと、1回のスクワットを1分間ぐらい、時間をかけて行うのです。
まず30秒ぐらいかけてゆっくり腰を落とし、また30秒ぐらいかけてゆっくりともとの位置に戻す。これを、呼吸の回数を減らし、できるだけ無酸素に近い状態で行うのです。
このくらいゆっくりとした速度でトレーニングを行うと、筋肉はそれを負荷の大きな運動だと錯覚します。そして、負荷が大きいと錯覚した筋肉は、乳酸がたまったときと同じように、脳に「成長ホルモンをたくさん出してください」とフィードバックを送るのです。
その結果、脳の下垂体から、乳酸がたまったときと同じくらいの成長ホルモンが分泌されるというわけです。
スロトレは、血流を制限しないので、1人でも安全に行うことができます。
トレーニング量の目安としては、1分間1回のスクワットなら、自分の体力に合わせて10回から15回ほど行っていれば、かなりの筋肉増強につながります。もし、10回なんてきつくてとてもできないという人は、3回でも5回でもいいので、できる回数から徐々に増やしていくといいでしょう。
運動経験の少ない人が筋力アップを目指す場合は、最初から神経経路を鍛えるマックススピードの無酸素運動をするより、スロトレと有酸素運動を組み合わせた運動から始めたほうが体への負担は少なくて済むのでお勧めのトレーニング法です。
どちらの方法でも筋肉が増えれば、基礎代謝も体温も上がっていくので、自分に合った方法で、筋トレを生活の中に取り入れていただきたいと思います。